内向的な、あまりにも内向的な

内向的な性格な僕の思考

22冊目『他人の顔』

 

他人の顔 (新潮文庫)

他人の顔 (新潮文庫)

 

液体空気の爆発で蛭のようなケロイドが顔に残ってしまった男が妻の愛を取り戻すために他人の顔を模造したプラスチック製の仮面を作って妻を誘惑しようとするが……。

 

作者は阿部公房氏。この小説も安部公房氏の独特な雰囲気を味わうことが出来る小説だと思う。

 

安部公房氏の小説は前回紹介した『人間そっくり』もそうなのだが着想はとても面白い。

 

しかし読んでいくとわかるけどその着想の面白さから娯楽小説としての面白さを期待してしまうと当てが外れてしまうかもしれない。

 

娯楽小説のようなドキドキ感や続きをどんどん読みたくなるような小説とはちょっと違う。

 

本書、『他人の顔』もそういう小説なのだ。ところでこの小説はケロイド状態になってしまった男が妻の気持ちを振り向かせるために他人の顔を模造した仮面を制作していくのだが、ここで一つ疑問がある。

 

それはなぜ他人の顔でなければならないのか?ということだ。

 

元の自分の顔の仮面の方が妻も馴染みがあってもう一度振り向かせることができそうだし、そもそもその他人の顔は妻にとってはまさに見ず知らずの他人なのだ。

 

他人の顔で近づいてそれで愛情を感じられたらそれはそれで本当に男の望み通りになったと言えるのだろうか?

 

本書はそういった部分も含めて安部公房氏、独特の文体で表現されている。