27冊目『V.T.R.』
本書を読む前『スローハイツの神様(上下巻)』を読むことをオススメする。
本書は『スローハイツの神様』の登場人物チヨダコーキ氏のデビュー作であり、それをチヨダコーキ氏名義で出発しているという体裁を取っている。
ちなみ解説も『スローハイツの神様』の登場人物、赤羽環氏が解説になっている。
こういう体裁の小説を読むのは初めてで楽しく読めた。
『スローハイツの神様』を先に読んでいるのでその登場人物が書く小説はどのような作風なのか理解しているからだ。
そしてここが重要なポイントなのだがチヨダコーキ氏が作者という設定上、その作風は辻村深月氏の作風とは異なっていないとこの小説は成功したとは言えないだろう。
本書の作風は『スローハイツの神様』で語られていたチヨダコーキ氏の作風をきちんと再現出来ている。
チヨダコーキ氏の作風は10代くらいの年齢層が読む小説という設定でその作風はライトノベル的な作風になっている。
この『V.T.R.』もライトノベル的な作品で辻村深月氏の作風とは異なっている。
本書の面白いところはファンタジー的な要素と現実世界的な要素を織り交ぜている点にある。
赤羽環氏も解説で述べているようにそこにはファンタジーでありながら現実世界の問題や人間の様をキチンと切り取っている。
ぜひ手にとってこの実験的な小説を他の人にも読んでほしい。