32冊目『理性の限界ーー不可能性・不確定性・不完全性
理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
- 作者: 高橋昌一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/06/17
- メディア: 新書
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人生の中で読んだ本ベスト10をあげろと言われたらこの本は確実にランクインする本だと思っている。
それほど大きな影響を受けた本だ。
私は一時期、完全な客観性を求めた時期があった。
なぜそんなものを求めたのかというとそれは騙されたくないと思ったからだ。
詐欺にあったとかそういうことではない。
しかし自分が信じていたことが実は間違っているのではないかという経験をしたからだ。
そしてこの経験をした私は何が事実なのか何が確かなのかということに関していたく神経質になっていた。
神経質になる中で私は完全な客観性がどこかにあると思いそれを見出そうとした。
しかしそれは私の幻想だった。
本書によってその夢は打ち砕かれた。
本書のタイトルは理性の限界となっている。
理性の限界に関する架空のシンポジウムという形をとっていて各章で選択の限界・科学の限界・知識の限界について議論をするというものになっている。
選択の限界を示すものとしてアロウの不可能性定理、科学の限界を示すものとしてハイゼルベルクの不確定性定理、知識の限界を示すものとしてゲーデルの不完全性定理を取り上げる。
正直に言えばこれら三つの定理は相当難しく理解できているかといえば理解できていない。
三つの定理が示す結果について知っていても結局はその結果がなぜ出るのか論理展開を追えない。
それゆえにこの本は自分自身の知性の限界を感じさせる本でもある。
私がこの本で最も衝撃を受けたのがポール・ファイヤーベントという哲学者の方法論的虚無主義という考え方だった。
この考え方はありとあらゆる考え方には一切の合理的基準はないというもので完全な客観性を求めていた私にとってあまりにも衝撃的だった。