内向的な、あまりにも内向的な

内向的な性格な僕の思考

書評 1冊目『内戦の日本古代史』

 

内戦の日本古代史 邪馬台国から武士の誕生まで (講談社現代新書)

内戦の日本古代史 邪馬台国から武士の誕生まで (講談社現代新書)

 
 
総評
 
本書、内戦の日本古代史は日本の古代に起こったそれぞれの内戦の概要を概観しながら日本の古代に起こった内戦の特徴をあぶり出していく。
 
著者の主張は最後の『おわりに』の章に集約されていると言えその章に集約されている主張をどのように感じるかで本書の評価が別れると言えるかもしれない。
 
しかし日本史が好きな人にとっては研究者による最新の研究成果や先行研究への言及を交えた古代日本史で起こった内戦の解説書としては充分面白く読める。
 
著者 倉本一宏氏について
 
一九八五年三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文学科研究科国史学専門課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。現在、国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学。主な著書に、『一条天皇』『壬申の乱』(いずれも吉川弘文館)、『藤原道長の権力と欲望』(文春新書)、『蘇我氏』『藤原氏』(いずれも中公新書)、『藤原道長御堂関白記」全現代語訳』『藤原行成「権記」全現代語訳』(いずれも講談社学術文庫)、講談社現代新書に『藤原道長の日常生活』『戦争の日本古代史』『戦乱と民衆』(共著)がある。
                       講談社現代新書帯より

 

著者の経歴を見る限りちゃんとした研究者だということがわかる。

このようなことをいうのは歴史関連の著作には研究者じゃない人の著作もあるのでそこは歴史関連の著作を読む際には確認するべき点だと思っているからだ。

 

 

歴史はただの出来事の羅列でもなければ出来事の暗記でもない

 

受験で歴史を勉強するとただ出来事を暗記するだけで終わってしまい歴史の面白さを感じれなくなってしまう。そこで本書のような新書が教科書や受験では追えなかった歴史の出来事の背景や経緯を補完してくれて、受験で勉強した歴史の知識に厚みが増すものだと言える。

なので日本史の知識がある程度ある人が読んだ方がより面白いとは思う。(ただこの手の本を手に取るのは日本史の知識がある人だと思うが)

 

日本古代史における戦いの実相

 

本書によれば日本古代史において戦いは中国や西欧と比べて規模や被害はかなり小さいという。

そしてその戦いも基本的に武力による衝突メインというよりも交渉したり説得したりということの方が多かったのではないかという。

ここに日本的な部分があってたとえ敵対した相手でも降伏をすれば寛容に扱いむしろ敵対していた勢力であっても取り込んでいく。

また中国大陸や朝鮮半島との関係も日本古代史における戦いには密接に関連している。

例えば磐井の乱など。

このあたりの感覚は現代ではわかりづらいかもしれない。

磐井の乱が典型的ではあるけヤマト王権が必ずしも朝鮮半島の外交を一心に担っているというわけではない。

特に九州の豪族などの中には独自に朝鮮半島との外交を展開している者もいた。(その典型例がまさしく磐井)

そしてそういう朝鮮半島との微妙な関係が日本の古代史における内戦に大きく影響を与えていることが本書から確認することが出来る。

 

女性天皇、皇后の活躍

 

本書から見えてくるもので割と面白いと思ったのが奈良朝くらいまでの女性天皇、皇后の活躍ぶりで特に皇位継承に関して女性天皇、皇后の影響の大きさに驚いたりする。

またこれは著者の仮設ではあるけど壬申の乱の黒幕が持統天皇だったのではないかという説はなかなか説得力のあるものだった。

 

武士の誕生と内戦の変容

 

本書の主張するところによると日本の古代国家における内戦は規模、残虐性が小さいものが多かったという。

それを検証するために古代史において起こった内戦を検討していくのだが、本書によればそのような特徴を持った日本の内戦も武士の誕生あたりを軸として変化していくと述べている。

その変化はそれまでの内戦で見られなかったような残虐性の高まりにあり、著者はこのあたりから古代から中世への移行という歴史的な変化を浮き彫りにしていく。

 

まとめ

 

日本史が好きな人は本書をとても面白く読める。

それぞれの内戦にいたる背景や経緯を知りたい人にはオススメできる本。