内向的な、あまりにも内向的な

内向的な性格な僕の思考

書評 2冊目 『いなくなれ、群青』

 

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

 

あらすじ

11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凛々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎・・・・・・。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。

                        本書カバーより

 著者紹介

河野裕

 1984年(昭和59)年、徳島県生れ。兵庫県在住。グループSNE所属。2009(平成21)年、『サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY』でデビュー。’15年、『いなくなれ、群青』で大学読書人大賞を受賞。同作から始まる「階段島」シリーズは’19(令和元)年『きみの世界に、青が鳴る』で完結した。著書に「サクラダリセット」シリーズ、「つれづれ、北野坂探偵舎」シリーズ、『最良の嘘の最後のひと言』などがある。 

                        本書カバーより

本作を手に取った理由

 

著者、河野氏の作品は今回初めて読みました。

映画化されるということで読んでみようと思い手に取りましたが、実は書店で本書を何度も目撃しており読みたいなと前々から気になっていた作品でもありました。

本作のどこに惹かれたのかというと間違いなくカバーの絵です。

女の子がなかなか可愛らしいなという不純な動機です。

 

本作は「階段島」シリーズというシリーズものの第一作目ということですが、まだ本作しか読んでいないためシリーズ全体でどうかという点についてはまたの機会ということになります。

ということで本作単体としてどうかという点から本作を評したいと思います。

「階段島」という設定

 

まず本作のキモはなんと言っても「階段島」という架空の島の設定です。

この「階段島」の設定で需要なのはこの「階段島」からは出ることが出来ない、出るためにはなくしたものを見つけなければならないという点、そしてこの「階段島」に来たのは本人の意思でもなく突然この「階段島」に来てしまうという点です。

 

本作はこの「階段島」の謎を追うということが物語の核になっていますが、わりと主人公の七草含めてこの「階段島」の生活にそれなりの折り合いをつけて生活しており特に困ることもなくむしろ穏やかに過ぎている感さえもあります。(ただこれはあくまでも主人公の生活が穏やかだという部分からそう見えるのかもしれませんが)

 

真辺由宇という存在

 

そんな穏やかとも言っていい生活を送っていた主人公、七草でしたがその穏やかな生活を脅かす存在としてもうひとりの主人公、真辺由宇という少女が出てきます。

 

この真辺由宇という存在が外側から見たときに不自然で異常であり有ってはならないことに思える「階段島」という存在をまさしく外側から見た視点でそのいびつさを暴こうとします。

 

この小説は七草という本当は諦めてはいけないんだけど諦めて「階段島」という島での生活に順応した主人公とその不自然さや異常さを諦めずに指摘してそれを変えようとする真辺由宇の対比で描かれています。

 

基本的に真辺由宇の行動のよって物語が動いていきます。

七草と真辺由宇はこの「階段島」で出会う前に出会っていてその時の真辺由宇のエピソードも随所に交えている。

 

妥協的日常とそれを変えようとする存在

 

納得していないけどそれでもその生活にはそこそこ満足しているということは多くの人々にとっては当たり前のようにある日常であるということを本作は感じさせてくれる。

そしてそのような生活を正しさという点で変えようとする人も日常にいる。

 

仕事をしていてそういう場面に出会うことがあった。

それは仕事の流れが悪いとかそれぞれの職員が抱える仕事の負担の割合が不公平があったとしてもそれを変えることの面倒さ平穏が脅かされる感よりもそれを受け入れて仕事した方がいいという妥協。

 

それなりに妥協していたはずの仕事を変えようと外部から人が来てあれこれと本当の正しさみたいなことを言って改革しようと動く。

それはまさしく本作の真辺由宇のような存在だった。

 

最後に

 

ちょっと話がずれてしまったけどこの作品は諦めと妥協をしていた七草が正しくあろうとする真辺由宇との再会を通して「階段島」の謎を解き明かしていく物語です。