29冊目『花ざかりの森・憂国』
三島由紀夫のデビュー作『花ざかりの森』や賛否両論ある『憂国』などを収録した短編集。
ちなみに僕がこの短編集の中で一番好きな作品は『卵』です。
表題作の一つ『花ざかりの森』は三島由紀夫氏が16歳のころに書いた作品だそうです。
本作は正直、この短編集の中で一番難しい語りだと思います。なので読みづらいです。
まあ僕の教養がないだけなんですけど。
ただこれを16歳で書いたとは正直、思えないくらい含蓄のある文章です。
ちなみに三島由紀夫は解説でこの作品のことをあまり好きではないと述べています。
もう一つの表題作『憂国』は2・26事件を題材にした作品である若い夫婦が自決するまでを描いたものになっています。
この作品はイデオロギー的に毛嫌いする向きがある作品ではあります。
三島の天皇を崇拝している部分が垣間見えるところなど。
三島本人も解説で賛否両論ある作品だというとを述べいますが、それでも自分の作風の良いところも悪いところも味わえるの作品だと述べております。
解説の中で三島はこの『憂国』を春本として読んだ人がいると述べていますが、確かにそういう風に読むことは可能です。
三島の小説の中では官能的な描写は多い作品だと思います。
自決前に夫婦は性行為をするのですが、そこには生というものの輝かしさと美しさをそのことで表現していると感じられました。
そして三島にとってその対極である死もまた美しものとして感得されていたのではないかと思えてなりません。
生と死という二つのテーマをこの作品の中で三島独特の美意識によって表現されているのではないかと思います。
最後に『卵』ですがある不良男子たちが習慣にしている卵の食べ方に(それぞれにこだわった食べ方をします)対して卵が異議申し立てをして裁判になってしまうという話です。
三島氏の小説はあまりこういうふざけたというかユーモラスな作品がないように思えますが本人曰くこの手の作品も書くことができるそうです。
ちなみにこの小説読者や評論家からの評判が悪かったそうで三島氏本人はこの作品が一番好きだそうです。
難しい語りが多い三島作品の中でも異色の作品だと思います。